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2021年08月30日

コラム

「コロナ禍でとられた障害者スポーツ振興の工夫」

副主任研究員 伊藤綾香

2020年に実施予定だったオリンピックおよびパラリンピックは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大を受け2021年に延期となりました。ちょうどこのコラムを書いている2021年8月現在、つい先日オリンピックが閉会を迎え、予定通りであればもう少しでパラリンピックが始まるというところです。
さて、こうした大規模なイベントを支えるのは日常的なスポーツ振興の取り組みであり、そこには大きく分けてスポーツを人々に知ってもらい、競技人口を増やしていく普及促進事業と、競技者のレベルを向上させる強化事業とがあります。日本では地域のスポーツ協会や、競技団体がそれらの重要な担い手となっています。
COVID-19の拡大により、各地での大会・競技会等イベントの中止や縮小など、こうした事業は大きく影響を受けました。それでも、様々な団体が、感染症拡大下でもスポーツを広げるための様々な工夫を凝らしました。弊社が2020年度に受託した「令和2年度 「障害者スポーツ推進プロジェクト (障害者のスポーツ参加促進に関する調査研究)」 (新型コロナウイルス感染症の影響調査) では、日本全国の障害者スポーツ団体へのCOVID-19の影響と、コロナ禍でのイベント実施状況についてのデータをまとめています。
報告書では、実際に、障害者スポーツ競技団体、都道府県・政令指定都市障害者スポーツ協会いずれもその多くがイベントにおいて無観客・入場制限といった方法をとったことや、イベント以外の事業の多くが前年度(2019年度)と比べて規模が縮小したことなどが明らかにされています。
一方、こうした中で、ICTを活用し、試合の生配信や、オンラインでのスポーツ教室の開催、生配信でのスポーツ大会を実施した団体もありました。例えば、報告書で事例が紹介されている令和2年度青森県特別支援学校オンラインスポーツ大会では、対面での競技が難しいことから、バレーボールのトスの回数を競うといった新しいルールが生み出されました。スペシャルオリンピックス日本では、大型イベントが中止となった代わりに、参加者で走行距離をつなぎ日本一周を目指す「オンラインマラソン」が実施されました。こうした取り組みは、障害者スポーツに関心を持つ新しい層を開拓することにもつながるかもしれません。
感染症の拡大がスポーツ振興にもたらした影響は小さなものではありません。しかし、もともとパラリンピック終了後のスポンサー撤退というパラバブル崩壊 といった指摘もされていました。障害者スポーツの火を絶やさないための各地での工夫が、様々な人へ障害者スポーツについて触れるきっかけを作り、こうした問題を乗り越えていくことにもつながるのか。障害者スポーツ団体や行政、スポンサーや市民の動きに今後も注目していきたいところです。

関連情報とリンク

スポーツ庁HPにて公開。

NHK、令和2年 2月27日17:00、Web 特集 「開幕まで半年“パラバブル”その先へ」

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