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2023年07月18日

コラム NEW

国の統計調査の効率化に思うこと

取締役兼主任研究員 奥田将己

 公的統計の整備に関する基本的な計画(第Ⅲ期基本計画が平成30年3月6日閣議決定/その変更版が令和2年6月2日閣議決定)の実行により、業務の効率化や報告者負担の軽減・統計の利活用推進の観点から、政府統計に関わる人々(①政府、自治体などの統計調査実施者・作成者、②企業、世帯など統計調査の報告者、③統計ユーザー)の時間コストの合計を3年間(平成30~令和2年度)で2割削減するとされていた1
 実際に、計画の実行によって時間コスト削減目標は達成されたものの、現在(令和5年7月時点)もその取り組みは、継続されている。

 政府統計に関する時間コストの削減は国からの委託業務として、以下のパターンなどで対応可能かの検討がなされている。
(1) 代替手段が存在する調査(内容の重複が見られる情報収集)の実施自体を省略
(2) 経営体に対しての調査であれば、許可を得た上で税務申告情報など、調査対象が必ず記録している情報を取り込んで活用
(3) その他、データ取得時やデータクリーニング時の操作を電子化・自動化の実施

 (1)(2)においては、代替手段で調査項目が合致しているか、データの取得条件に大きな違いがないか、取得されたデータそのものに傾向の違いがないかを確認した上で、代替手段を適用する。
 (3)においては、データ取得時に想定される機材環境やデータ入力者の手間などについて、現実の運用に耐えうるかを確認しつつ、手法の改善を目指していく。さらに、データクリーニング部分に関しては、項目間で発生しうる矛盾についての確認などの設定を行う。

 これらの手段を検討する際に必要となる知見は、統計調査全般の実施時にも、査読付き学術論文の作成時にも同様に必要になる。
 データを扱う学術研究において、査読付きの論文の出版に至るまでに必要な「仮説の設定方法」「データ取得方法(データクリーニング・データクレンジングを通しつつ)」「データ分析方法」など、それぞれの知見は、大学などの指導教員をはじめ、ゼミや学会発表の聴衆、論文投稿先の査読者などからの指摘を受けながら、研究全体が論理的で再現性のあるものになるよう磨かれていく。特にデータの取得方法を考える際、対照実験を厳密に組める場合などを除き、データの代表性やサンプル数の構成など、統計調査の際と同様の配慮が必要になることが多い。

 なお、国の統計は全国が対象とはいえ、限られた条件下での回答者設定の統計も存在するためサンプル数の規模はさまざまであり、仮説の設定からデータ分析までの一連の流れは、いずれの統計でも深く関連する。

 限られた予算の中でいかに有効な統計調査の運用ができるかの判断には、調査背景やデータの分析による解釈が不可欠となるため、統計の一使い手として関わり続けていきたいところである。

1 官民の統計コスト削減に係る最終フォローアップ結果 令和3年9月総務省政策統括官( 統計制度担当 )
https://www.soumu.go.jp/main_content/000562988.pdf

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