発達障害者支援センターの地域支援機能、運営状況等に関する実態調査
【背景と目的】
平成17年4月に発達障害者支援法が施行されてから15年以上が経過した現在、センターには、地域の実情を踏まえながら当事者からのニーズに柔軟に対応していくことが求められている。実際に全国のセンターでどのような支援がなされているのか、地域のニーズにこたえるためにどのような多様な展開があるのか、また、それぞれにおいてどのような課題が生じているのかを把握することを通して、今後、その地域支援機能や運営体制の再検討、それに基づく要綱の見直し等を図っていく必要がある。そのため、本調査では、全国のセンターを対象としたアンケート調査を実施し、地域支援の実態や多様性の様相を明らかにする。その結果をもとに、社会的なニーズにより即したセンターのあり方を検討する資料とすることを目的とする。
【対象と方法】
発達障害者支援センター全国連絡協議会に加盟する83か所の発達障害者支援センターおよびそれに準ずる機関2か所を対象として、各管轄地域における発達障害児者への相談支援等の実施状況、関係機関等との連携状況、支援における課題等に関するアンケート調査を行い、79箇所から回答を得た(回収率92.9%)。なお、調査票の作成、分析にあたっては有識者や関係機関等から構成される検討委員会および作業部会からの助言を受けた。
【結果と考察】
事業の実施状況について
センターの地域的な多様性と課題について
本調査研究の課題
障害児の相談支援に関する実態把握の調査研究
【目的と方法】
障害児が障害福祉サービス等を利用する際には、相談支援事業所にて障害児支援利用計画やサービス等利用計画を作成することが必要となるが、実際には、事業所の利用が進まない、利用者が事業所を介さずに計画を作成する(セルフプラン)割合が高い、そのためサービスが適切に提供されていないケースがある、等の問題が生じているとされる。
しかしながら、全国的に詳細な実態を把握することはできていない状況のため、本調査研究では、行政(市区町村)および事業所を対象として障害児相談支援の実態を把握するための調査を実施し、有識者による検討を踏まえ、障害児相談支援における課題や効果的な相談支援のあり方について検討した。
市区町村向けのアンケート調査については、全国1,741 市区町村を対象とし、874 箇所から回答を得た(回収率50.2%)。事業所向けのアンケート調査については、各市区町村における指定障害児相談支援事業者・指定特定相談支援事業者・委託相談支援事業者のいずれかに該当する事業所を対象とし、1,609 箇所から回答を得た。
【結果と考察】
市区町村や事業所における障害児相談支援の実態について
市区町村や事業所における障害児相談支援の実態について、全体および人口規模別に検討したところ、おおよそ以下のような傾向が示唆された。
以上の傾向を踏まえ、相談支援体制の改善や相談支援事業所の負担軽減に向けた対応を行っていくことが望ましいと考えられる。
事業所での計画作成と関連する要因について
「事業所での計画作成」と関連する要因について検討を行ったところ、相談支援専門員一人あたりの計画作成が必要な児童数が多いこと等「事業所の抱えうる負担」が大きい市区町村では、「事業所での計画作成率」が低い、という傾向がみられた。
さらに、「事業所の抱えうる負担」に関連する要因について検討したところ、負担の増大に関連する要因としては、児童発達支援事業所や放課後等デイサービス事業所の数等、「障害福祉サービスの提供状況」という要因が示唆された。一方で、負担の軽減に関連する要因として、「市区町村における相談支援体制や事業所との連携」について検討したところ、サービス担当者会議に市区町村職員も出席すること等、「市区町村と事業所との連携」を示す変数についてはやや関連がみられたものの、全体としては明確な傾向はみられなかった。
ただし、本調査では個々の障害児やその家族を対象とする調査を行っていないため、今後は個別のケースについても情報を得られるような調査設計を行い、相談支援事業所における計画作成に関連する要因や計画作成による効果等について、より詳細に検討を行っていく必要がある。