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令和5(2023)年度障害者総合福祉推進事業

都道府県・政令市における発達障害者支援地域協議会の協議等の状況及び発達障害者支援センターの役割・機能に関する実態調査

【背景と目的】

 都道府県・政令指定都市では、地域の発達障害者支援体制整備のために、発達障害に関する課題やニーズ等の共有・協議の場として発達障害者支援地域協議会を開催することとなっている。しかし、開催方法や協議内容、地域特性を踏まえた協議がなされているか等、実態把握が不十分な状態にある。

 以上を踏まえ、本調査事業を通して、発達障害者支援地域協議会の現状を、市町村や発達障害者支援センター(以降、「センター」)との連携等も含め、地域ごとの特性も考慮しながら把握する。本調査の結果を、地域の支援体制構築に資する協議会のあり方や地域の実情に合わせたセンターの運用の検討につなげることを目的とした。

【対象と方法】

 発達障害者支援地域協議会の設置が求められている都道府県、政令市(計67箇所)を対象に、協議会の実施状況や課題に関するアンケート調査を行い、63箇所(回収率94.0%)から回答を得た。調査票は、検討委員会および作業部会での助言を得ながら作成した。

 加えて、同対象のうち、有識者等の意見をもとに、地域の規模、その地域のセンターの実施主体等も考慮しながら選定した10自治体を対象に、協議会の構成の背景や議題の設定方法、PDCAサイクルを回すための工夫や課題に関するヒアリング調査を行った。

【結果と考察】

 本調査の結果、自治体によって、協議会の位置づけや、センターの立ち位置、発達障害にかかる計画や施策への協議結果の反映状況等に特色があることが分かった。

 ただし、本調査は、各協議会の担当課等を対象として実施したことから、現時点での協議会の協議内容をつかむことはできるものの、各地域で本来議論されるべき内容・各地域の潜在的なニーズを把握することは難しい。今後、各地域における主要なニーズ、保有する地域資源の状況、発達障害者支援センターが果たす役割といった視点からのさらなる調査・分析が求められる。

令和4(2022)年度障害者総合福祉推進事業

指定障害福祉サービス事業所等に対する実地指導等に係る指導方法に関する調査研究

【背景と目的】

 障害福祉サービス等の利用者や事業所の増加するなかで事業所の指導監督等の業務も増加し、結果として十分な実地指導等が実施できていないという実態が指摘されており、社会保障審議会障害者部会でも、都道府県等に対する支援を検討することが要請されている。このことを踏まえ、指導監査の負担の軽減および効果的な手法を目指した標準化に向けて、各自治体の実地指導等に係る指導状況の把握、取り組みの好事例等を収集することを目的とした。

【対象と方法】

 障害福祉サービス事業所の指定権限および指導監査権限のある、都道府県、政令指定都市および中核市(計129件)を対象に、実地指導の現状や効率的な実施の工夫・意向等を把握するためのアンケート調査を行い、113箇所(回収率87.6%)から回答を得た。加えて、同対象のうち、有識者の意見やアンケート調査の結果をもとに、実地指導における外部機関等の利用、デジタル化の工夫、質の向上に係る工夫の観点から独自の取り組みを行っている自治体計11か所に対しオンライン面談又は書面にてヒアリング調査を行い、好事例集を作成した。

【結果と考察】

 アンケート調査の結果、実地指導の人員体制や当日の訪問人数、時間等の実態に加えて、工夫や課題のデータも得られた。課題では「対応する事業所の増加に担当者の数が追い付かない」「担当者の異動等でノウハウが定着しない」が多くの自治体で共通していたが、一方で研修マニュアル作成や外部機関の利用は限られていた。

 ヒアリング調査では、大きく分けて、①外部機関の活用、②デジタル化の工夫、③質の向上の工夫、の観点から好事例をまとめた。①や②では具体的な方法や導入自治体における効果についての知見のほか、③からは、項目の削減や標準化に当たっては、注意の必要なケースにも配慮しながら進める必要性などもうかがえた。

 本調査の結果は各自治体へ通知するなどにより実地指導等の参考として利用いただくほか、指導監査の負担の軽減および効果的な手法を目指した標準化のための資料としての活用が期待される。

通所サービス事業所における食事の提供に係る他制度比較に関する調査研究

【背景と目的】

 食事提供体制加算・食事提供加算は、障害者の通所事業所等において、事業所内調理等により食事の提供を行った際に算定される加算である。食費についてはサービス利用者の自己負担が原則となっているが、令和3年度障害福祉サービス等報酬改定において、「栄養面など障害児者の特性に応じた配慮や食育的な観点など別の評価軸で評価することも考えられるかという点も含め、他制度とのバランス、在宅で生活する障害者との公平性等の観点も踏まえ、更に検討を深める」という整理のもと、食事提供体制加算・食事提供加算の経過措置が延長された。

 このことを踏まえ、高齢者や児童に対する食事の提供状況や、介護報酬・公定価格における制度的な対応について調査するとともに障害福祉分野との比較を行うことに加え、障害児者の食事を取り巻く課題等についての先行研究の整理と食事の提供の現状を整理し、今後の報酬体系の検討における基礎資料の作成に活用することを目的とした。

【対象と方法】

 文献調査として、①障害児・者の、食事・栄養・健康に関する問題および必要な配慮の整理、②食事に関する制度の領域間比較、を行なった。加えて、食事提供体制加算・食事提供加算対象の事業所について、全体に占めるサービスの構成割合ごとに抽出した11,905か所(障害者対象サービス9,500か所、障害児対象サービス2,405か所)を対象に、アンケート調査を実施した。障害者対象サービス2,144か所(うち通所サービス1,832か所)、障害児対象サービス558か所より回答を得て、結果を分析した。

【結果と考察】

 先行研究からは、障害児・者が健常者、定型発達児・者と比べて「栄養・健康リスク」が高いこと、「食行動・食生活習慣」「食事環境」に関するリスクがあることから様々な配慮が求められること、専門家による介入が障害者の健康の確保にあたり一定の効果が見込める可能性が示唆されていた。また、各領域の通所サービスにおける「食事の提供に要する費用」の負担は、障害児者福祉領域および高齢者福祉領域では、基本的に全額あるいは一部が利用者負担であるのに対し、児童福祉領域では、人件費は利用者の所得に限らず、食材料費は所得の低い世帯の3歳未満の子どもについて全額公費負担となっていた。アンケート調査の結果、食事提供を行っている事業所では、良好な体重の維持や「偏食」「早食い・丸呑み」といった課題に対処していたほか、食事提供を行っていない事業所よりも利用者の体重や身長の記録を行っていた。また、食事提供のある事業所の中でも、食事提供(体制)加算がある場合にはより細やかな配慮がなされていた。

令和3(2021)年度障害者総合福祉推進事業

発達障害者支援センターの地域支援機能、運営状況等に関する実態調査

【背景と目的】

 平成17年4月に発達障害者支援法が施行されてから15年以上が経過した現在、センターには、地域の実情を踏まえながら当事者からのニーズに柔軟に対応していくことが求められている。実際に全国のセンターでどのような支援がなされているのか、地域のニーズにこたえるためにどのような多様な展開があるのか、また、それぞれにおいてどのような課題が生じているのかを把握することを通して、今後、その地域支援機能や運営体制の再検討、それに基づく要綱の見直し等を図っていく必要がある。そのため、本調査では、全国のセンターを対象としたアンケート調査を実施し、地域支援の実態や多様性の様相を明らかにする。その結果をもとに、社会的なニーズにより即したセンターのあり方を検討する資料とすることを目的とする。

【対象と方法】

 発達障害者支援センター全国連絡協議会に加盟する83か所の発達障害者支援センターおよびそれに準ずる機関2か所を対象として、各管轄地域における発達障害児者への相談支援等の実施状況、関係機関等との連携状況、支援における課題等に関するアンケート調査を行い、79箇所から回答を得た(回収率92.9%)。なお、調査票の作成、分析にあたっては有識者や関係機関等から構成される検討委員会および作業部会からの助言を受けた。

【結果と考察】

  1. 事業の実施状況について

    • 全国のセンターのほとんどにおいて、「不登校・引きこもりの事例」や「複合的な問題がある事例」といった複雑な相談事例を扱った経験があり、しかも、多くのセンターがその対処を困難と感じていた。こうした多様な事例への対応について、「管轄業務かと悩むことが多い」センターは全体の40.5%であった。
    • 設定されてきた役割の実施状況では、対象者について、「疑い・未診断」のケースも対象としているセンター、要綱に記載されていない障害種、本人や家族以外の関係者・機関からの相談も受け付けているという回答が多かった。また、障害児入所施設等への附置では、施設に附置していないというセンター、緊急対応については行っていないセンターが多くを占め、ほとんどのセンターで他の資源によって対処していた。相談支援、発達支援、就労支援においてもほとんどが地域にその役割の一部を担う機関があり、連携しながら支援を行っているが、自由記述では、制度や資源の狭間の部分や困難事例への対応において専門性を発揮しているというものがあった。
    • 苦情への対応方法について、苦情対応マニュアルに沿った対応を行っているセンターは全体の32.9%であり、また、本人や家族の権利擁護に関する指針等があるとしたセンターも29.1%であった。実施状況の把握及び評価について、実施主体への実績報告や定期的な実施状況の確認を行っているセンターは回答センターの90%前後であったが、センター業務の定期的な評価を行っているセンターは55.7%と半数強と、センター間で差がみられた。
  2. センターの地域的な多様性と課題について

    • センターをめぐる典型的な課題として設定した課題項目では、スタッフの少なさや、運営上の制約による体制整備の困難に関する課題への「あてはまる」「ややあてはまる」が多く、センターに共通する課題と考えられる。センターが行っていることが望ましい事項について設定したアクション項目では、「当事者の家族との意見交換、交流」「支援スキル向上のための書籍購入と貸し出し」「センター内での個別の事例検討会」「管轄する地域の支援機関の情報取集と集約」「都道府県行政市区町村行政への提案・働きかけ」については、回答したセンターの70%以上が「実施している」と回答していた。一方、人材育成にかかる「EBPに関する職員研修」「センター職員へのスーパーバイズ体制の整備」についてはそれぞれ35.4%、51.9%となっており、センター間での差がみられた。
    • 加えて、センターのなかでも、管轄人口やスタッフ数、スタッフのキャリアなどの条件が異なることから、地域(政令指定都市、政令指定都市あり都道府県、政令指定都市なし都道府県)と実施主体(直営、委託)で6つのクラスタを作り、それぞれにおける項目への回答傾向を確認した。結果、クラスタごとに課題への反応、アクション項目の実施率が異なっていた。特徴や背景については本調査データの制約もあり、今後の調査によってより明確にしていく必要があるが、センターの設置状況によって、センターの果たすべき役割や立ち位置が異なる可能性が示された。
    • 「センターが地域の中でどのような役割を担っており、また、これから担っていくべきと思うか」への回答では、多様なニーズに応えるうえで地域支援体制を整備していくことの必要性や、発達障害者支援における地域の中核機関としての役割に関するものが多くみられた。
  3. 本調査研究の課題

    • 本調査のアンケート項目は要綱に沿った形で設定したが、それ自体が実態と相違がある場合、回答者間で回答における解釈が異なっていた可能性は否定できない。また、本調査票では、全国のセンターにおける実態の詳細をまず把握するという仮説生成的な目的から自由記述回答を複数設けたため、分析において量的な把握が難しかった。今後、本結果をもとにした調査の必要がある。

令和元年度障害者総合福祉推進事業

【目的と方法】

障害児が障害福祉サービス等を利用する際には、相談支援事業所にて障害児支援利用計画やサービス等利用計画を作成することが必要となるが、実際には、事業所の利用が進まない、利用者が事業所を介さずに計画を作成する(セルフプラン)割合が高い、そのためサービスが適切に提供されていないケースがある、等の問題が生じているとされる。

 しかしながら、全国的に詳細な実態を把握することはできていない状況のため、本調査研究では、行政(市区町村)および事業所を対象として障害児相談支援の実態を把握するための調査を実施し、有識者による検討を踏まえ、障害児相談支援における課題や効果的な相談支援のあり方について検討した。

 市区町村向けのアンケート調査については、全国1,741 市区町村を対象とし、874 箇所から回答を得た(回収率50.2%)。事業所向けのアンケート調査については、各市区町村における指定障害児相談支援事業者・指定特定相談支援事業者・委託相談支援事業者のいずれかに該当する事業所を対象とし、1,609 箇所から回答を得た。

【結果と考察】

  1. 市区町村や事業所における障害児相談支援の実態について

     市区町村や事業所における障害児相談支援の実態について、全体および人口規模別に検討したところ、おおよそ以下のような傾向が示唆された。

    • 障害福祉サービスの事業所数が多い市区町村や、障害の疑いのある子どもを相談支援につなげる体制が整っている市区町村では、計画作成のニーズが高くなると推測される。
    • そのような中でも、自治体や相談支援事業所における相談支援の体制が整っていることにより、計画作成を事業所で行う割合が比較的高く保たれる、という傾向が示唆された。
    • しかし、人口規模の大きい市区町村等、計画作成のニーズに相談支援の体制が追い付かない等の状況にあると推測される市区町村では、事業所での計画作成率が低くなる、という傾向が示唆された。実際、障害児相談支援における課題として事業所数や人材の不足を挙げる割合は、人口規模の大きい市区町村でより高くなっていた。
  2. 以上の傾向を踏まえ、相談支援体制の改善や相談支援事業所の負担軽減に向けた対応を行っていくことが望ましいと考えられる。

    事業所での計画作成と関連する要因について

    「事業所での計画作成」と関連する要因について検討を行ったところ、相談支援専門員一人あたりの計画作成が必要な児童数が多いこと等「事業所の抱えうる負担」が大きい市区町村では、「事業所での計画作成率」が低い、という傾向がみられた。

     さらに、「事業所の抱えうる負担」に関連する要因について検討したところ、負担の増大に関連する要因としては、児童発達支援事業所や放課後等デイサービス事業所の数等、「障害福祉サービスの提供状況」という要因が示唆された。一方で、負担の軽減に関連する要因として、「市区町村における相談支援体制や事業所との連携」について検討したところ、サービス担当者会議に市区町村職員も出席すること等、「市区町村と事業所との連携」を示す変数についてはやや関連がみられたものの、全体としては明確な傾向はみられなかった。

     ただし、本調査では個々の障害児やその家族を対象とする調査を行っていないため、今後は個別のケースについても情報を得られるような調査設計を行い、相談支援事業所における計画作成に関連する要因や計画作成による効果等について、より詳細に検討を行っていく必要がある。