障害福祉現場における手続負担の軽減に関する調査研究事業
【背景と目的】
規制改革実施計画(令和5年6月閣議決定)「障害福祉分野における手続負担の軽減(ローカルルールの見直し等)」および令和6年度規制改革実施計画「介護・保育・障害福祉分野における合併、事業譲渡等に関するローカルルールの防止等」を踏まえ、指定申請、加算届出等にかかる標準様式の利用状況や意見聴取とそれに基づく修正案の作成、電子的に申請・届出を可能とするためのシステムの整備に向けた調査、地方公共団体ごとのローカルルールに関する調査、手続き負担軽減に係る取組み状況や好取組事例に係る調査を行い、手続き負担の軽減に向けた取り組みに活かすことを目的として実施した。
【対象と方法】
指定申請、加算届出等の標準様式の利用状況や、電子的な申請・届出のシステム整備に向けた状況や課題、手続き負担のための工夫の実施や好事例を収集するために、全国の都道府県・政令市・中核市を対象とした書面調査およびヒアリング調査を行なった。加えて、手続等に係る地方公共団体による独自ルールの有無・内容の把握のために、全国の障害福祉サービス事業所、児童福祉サービス事業所を対象としてアンケート調査およびヒアリング調査を実施した。さらに、事業者要望窓口における要望内容を整理した。遂行にあたっては検討委員会を設置し、適宜意見聴取等を行った。
【結果と考察】
本調査の結果、指定申請関係の様式については、回答自治体の6~7割が使用していない状態であり、一方、加算届出関係の様式では、6~8割強が変更を加えず使用している状態であったが、いずれも、入れ替え対応が間に合っていないケースが多かった。
システム導入時に想定される課題としては、書類不備等の場合の対応や事業所への説明・対応困難な事業所が発生すること、問い合わせへの対応、現在導入しているシステムや方法(ローカルルール等)との軋轢に関する意見等があがった。それに対して、求める機能として、エラーチェック・アラート機能や、事業所管理台帳システム等他のシステムとの連携、ガイド・サポートデスクの設置等があがった。
ローカルルールに関して、特に、契約内容報告については、報告書の形式で行うことへの必要性に対する疑義が呈された。障害福祉サービス受給者証については、自治体毎に様式や手続きが異なることや、審査・発行までの期間の違いに関する意見が多くみられたほか、電子化への期待の声もあった。実務経験証明書については、人材確保の観点から運用の改善が求められる一方で、真正性の担保についての課題も指摘された。
成人期の発達障害者等における支援ニーズの把握に関する調査
【背景と目的】
発達障害者支援センター(センター)や発達障害者地域支援マネジャーが相談対応を行っている16歳以上の思春期以降、成人期の発達障害者等の抱える課題や、アセスメントを含めたセンターの対応方法、機関コンサルテーション等の関係機関との連携も含めた対処やその際の障壁について調査を行う。それにより、関係機関との連携方法も含めたセンターの今後の相談対応等のあり方や人材育成の検討のための資料とすることを目的とする。
【対象と方法】
全国の発達障害者支援センター(計102箇所)、地域支援マネジャー(地マネ)設置機関(計128箇所)を対象に、思春期以降の発達障害者等による相談内容(ニーズ)や支援の実施方法、関係機関との連携状況等に関するアンケート調査を実施した。調査票は討委員会及び作業部会での助言を得ながら、それぞれに分けて作成し、センターは92件(回収率90.2%)、地マネ設置機関は95件(回収率74.2%)から回答を得た。
加えて、同対象のうち、アンケート調査の結果を踏まえ、6件の発達障害者支援センター、1件のセンター外配置の地マネ設置機関を対象に、関係機関との連携・役割分担等、アセスメントや本人プログラム等における工夫、家族支援の工夫、スタッフに求めるスキルや研修における工夫等についてのヒアリング調査を行った。
【結果と考察】
センターに寄せられることの多い相談として、相談依頼者ごとにみると、まず学生本人からは不登校・学生生活・進路に関する相談、学生以外の本人からは就労に関する相談、家族からは生活や家庭で家族ができることに関する相談、支援機関等からは就労に関する相談が一位を占めていた。また、困難となりやすいケースとして、センター、地マネともに、高機能ケース、不登校・ひきこもりケースや行動障害、複合的な困難の絡む背景があるケース等が挙げられた。支援にあたっても、発達障害ということでの支援が望まれない、本人に困り感がないといったケースなど、発達障害の特性をベースとしながら多岐に渡って問題が表出しアプローチが難しくなる場合があることがわかった。
センターがこの3か月間で連携を多くとった機関の上位は「基幹相談支援センター」、「障害者就業・生活支援センター」、「医療機関」であったが、他機関と協働して当たったケースへの回答で、生活困窮関係や自立・一人暮らし関係について、センター、地マネのそれぞれ6割弱、4割弱が回答しており、多様な機関との連携が行われていた。
ヒアリング調査では、アセスメントの工夫として、概ね共通して、課題として表出している事象について、それが何から起こっているかの深掘りや把握に重点を置いていたほか、事例検討会等を行うなど、スタッフ個々での判断としない工夫等が取られていた。一方、家族への支援ができる機関が限られることや、様々な枠組みに乗りづらいが困りごとがあるケースを抱え込まざるを得ない状態も伺えた。
ICD-11への改定を踏まえた発達障害者支援のあり方に関する調査
【背景と目的】
現行の発達障害者支援法の支援対象となる「発達障害」は、ICD-10における第5章の「心理的発達の障害(F80-F89)」及び「小児<児童>期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害(F90-F98)」に含まれる障害であると定義されている。2019年5月に採択されたICD-11では疾病の分類や病名等が変更され、現行の発達障害は第6章の一部として再構成された。本調査では、現行法の支援対象となる疾病等がICD-11への改訂に伴いどのような位置付けとなるかを整理するとともに、ICD-11への改訂に伴う疾病等の位置づけの変更で想定される影響等について、当該疾病等にかかる当事者団体・職能団体・学会等へのヒアリングを通じて把握し、今後の発達障害者支援法における対応のあり方について検討するための材料を得ることを目的として実施した。
【対象と方法】
WHOが2024年1月段階で公表する資料を元に、現行法の支援対象となる「発達障害」に該当する疾病等が、ICD-11の中のどの疾患カテゴリに対応するかをまとめた。加えて、当該疾病等にかかる当事者団体・職能団体・学会等に所属する有識者に対してヒアリングを行い、ICD-11への改訂に伴う疾病等の位置づけの変更で想定される影響等についての意見を取りまとめた。本調査における一連の内容は、有識者から調査委員会での助言を受けながら進めた。
【結果と考察】
現行法の支援対象となる「発達障害」に該当する疾病等は、ICD-11において第6章の中の「神経発達症群」の一部として再編されているが、2024年1月時点でWHOが示すmapping tableに基づくと、第8章や第20章といった他の章に分類された疾患もあり、またF90-F98の疾患は第6章の中で「神経発達症群」に限らず「秩序破壊的又は非社会的行動症群」、「不安又は恐怖関連症群」、「ストレス特異的関連症群」、「排泄症群」、「食行動症又は摂食症群」など広く分類されている可能性があることが示された。
ICD-11への改訂に伴う疾病等の位置づけの変更で想定される影響等については、福祉分野での対応に関することとして「ICD-10のF80-F98のうちICD-11の神経発達症群に含まれない疾病の、今後の支援への影響」「知的障害が神経発達症群に分類されることによる影響」「ICD-11への改訂による、既存の制度への影響」「ICD-11改訂後も現行の発達障害への支援を途切れさせない制度の検討」「ICD-11改訂による病名や分類の変更に伴い生じうる混乱を防ぐための通知・周知等」についての意見が挙がった。医療分野での対応に関することとしては、「公的支援における診断書・意見書の作成」「発達障害と規定される診断等のあり方」についての意見が挙がった。期待できることとしては「実態をより正確に反映する分類となり、使いやすい」「疾患に対する理解や治療の促進が期待できる」「併存症の状況把握に活用しやすい」「予防医学等への活用が期待できる」という意見が挙がった。
【背景と目的】
片目が失明状態にあり、もう一方の目の矯正視力が0.6を上回る者(以下、「片目失明者」という。)は、現行法においては視覚障害として認定されない。片目失明者は、視覚的な困難や社会的な困難に直面することが多いと考えられるが、片目失明者を対象とする実態調査はこれまで行われておらず、当事者が実際に抱えている課題や社会的なニーズ等は明らかでない。本調査では今後の片目失明者の合理的配慮についての検討の基礎資料を作成することを目的として、片目失明者の視機能に関する文献調査を行うとともに、片目失明者が社会生活で抱える課題と必要な支援・配慮に関するアンケート調査及びヒアリング調査を行った。
【対象と方法】
文献調査では、片目を失明していることによる機能的な影響について調べるため、片目失明者、あるいは晴眼者の単眼の視機能等を検証した国内・国外の先行研究を収集した。アンケート調査では、片目失明者が社会生活の中で感じている困り事や必要と考える支援・配慮について事例・意見を収集するため、18歳以上の片目失明者を対象として調査を実施した(回答数133件)。ヒアリング調査では、眼科医6名を対象としてアンケート調査の結果を踏まえた片目失明者への合理的配慮のポイント等を聞き取った。
【結果と考察】
文献調査では、片目失明者(または幼少期の一時期に視覚遮断を経験した者)、あるいは晴眼者の単眼の視機能等は、晴眼者の両眼の視機能等に比べて制限があるが、一方で特に片目失明者では一部の課題においてむしろ晴眼者よりも成績が高くなるという事例も報告されていた。
アンケート調査では、18歳以上の片目失明者の困り事の事例として「見え方に制限があることに由来する事例」「ルールに由来する事例」「外見に由来する事例」「心理的な事例」「経済的な事例」が挙がり、それを踏まえた支援・配慮についての意見としては「啓発に関すること」「情報共有に関すること」「ルールに関すること」「経済的支援・制度に関すること」が挙がった。
ヒアリング調査では、眼科医6名からは、アンケート調査で得られた事例・意見を踏まえての片目失明者への合理的配慮のポイントとして「啓発」と「義眼の費用の支援」が挙がった。また調査結果を踏まえた今後の展開については、「困り事についてのより詳細な解析」「片目失明であることを理解してもらうことで得られる利点についての事例収集」「片目失明者への支援・配慮についてのさらなる議論」についての意見が挙がった。
都道府県・政令市における発達障害者支援地域協議会の協議等の状況及び発達障害者支援センターの役割・機能に関する実態調査
【背景と目的】
都道府県・政令指定都市では、地域の発達障害者支援体制整備のために、発達障害に関する課題やニーズ等の共有・協議の場として発達障害者支援地域協議会を開催することとなっている。しかし、開催方法や協議内容、地域特性を踏まえた協議がなされているか等、実態把握が不十分な状態にある。
以上を踏まえ、本調査事業を通して、発達障害者支援地域協議会の現状を、市町村や発達障害者支援センター(以降、「センター」)との連携等も含め、地域ごとの特性も考慮しながら把握する。本調査の結果を、地域の支援体制構築に資する協議会のあり方や地域の実情に合わせたセンターの運用の検討につなげることを目的とした。
【対象と方法】
発達障害者支援地域協議会の設置が求められている都道府県、政令市(計67箇所)を対象に、協議会の実施状況や課題に関するアンケート調査を行い、63箇所(回収率94.0%)から回答を得た。調査票は、検討委員会および作業部会での助言を得ながら作成した。
加えて、同対象のうち、有識者等の意見をもとに、地域の規模、その地域のセンターの実施主体等も考慮しながら選定した10自治体を対象に、協議会の構成の背景や議題の設定方法、PDCAサイクルを回すための工夫や課題に関するヒアリング調査を行った。
【結果と考察】
本調査の結果、自治体によって、協議会の位置づけや、センターの立ち位置、発達障害にかかる計画や施策への協議結果の反映状況等に特色があることが分かった。
ただし、本調査は、各協議会の担当課等を対象として実施したことから、現時点での協議会の協議内容をつかむことはできるものの、各地域で本来議論されるべき内容・各地域の潜在的なニーズを把握することは難しい。今後、各地域における主要なニーズ、保有する地域資源の状況、発達障害者支援センターが果たす役割といった視点からのさらなる調査・分析が求められる。
指定障害福祉サービス事業所等に対する実地指導等に係る指導方法に関する調査研究
【背景と目的】
障害福祉サービス等の利用者や事業所の増加するなかで事業所の指導監督等の業務も増加し、結果として十分な実地指導等が実施できていないという実態が指摘されており、社会保障審議会障害者部会でも、都道府県等に対する支援を検討することが要請されている。このことを踏まえ、指導監査の負担の軽減および効果的な手法を目指した標準化に向けて、各自治体の実地指導等に係る指導状況の把握、取り組みの好事例等を収集することを目的とした。
【対象と方法】
障害福祉サービス事業所の指定権限および指導監査権限のある、都道府県、政令指定都市および中核市(計129件)を対象に、実地指導の現状や効率的な実施の工夫・意向等を把握するためのアンケート調査を行い、113箇所(回収率87.6%)から回答を得た。加えて、同対象のうち、有識者の意見やアンケート調査の結果をもとに、実地指導における外部機関等の利用、デジタル化の工夫、質の向上に係る工夫の観点から独自の取り組みを行っている自治体計11か所に対しオンライン面談又は書面にてヒアリング調査を行い、好事例集を作成した。
【結果と考察】
アンケート調査の結果、実地指導の人員体制や当日の訪問人数、時間等の実態に加えて、工夫や課題のデータも得られた。課題では「対応する事業所の増加に担当者の数が追い付かない」「担当者の異動等でノウハウが定着しない」が多くの自治体で共通していたが、一方で研修マニュアル作成や外部機関の利用は限られていた。
ヒアリング調査では、大きく分けて、①外部機関の活用、②デジタル化の工夫、③質の向上の工夫、の観点から好事例をまとめた。①や②では具体的な方法や導入自治体における効果についての知見のほか、③からは、項目の削減や標準化に当たっては、注意の必要なケースにも配慮しながら進める必要性などもうかがえた。
本調査の結果は各自治体へ通知するなどにより実地指導等の参考として利用いただくほか、指導監査の負担の軽減および効果的な手法を目指した標準化のための資料としての活用が期待される。
通所サービス事業所における食事の提供に係る他制度比較に関する調査研究
【背景と目的】
食事提供体制加算・食事提供加算は、障害者の通所事業所等において、事業所内調理等により食事の提供を行った際に算定される加算である。食費についてはサービス利用者の自己負担が原則となっているが、令和3年度障害福祉サービス等報酬改定において、「栄養面など障害児者の特性に応じた配慮や食育的な観点など別の評価軸で評価することも考えられるかという点も含め、他制度とのバランス、在宅で生活する障害者との公平性等の観点も踏まえ、更に検討を深める」という整理のもと、食事提供体制加算・食事提供加算の経過措置が延長された。
このことを踏まえ、高齢者や児童に対する食事の提供状況や、介護報酬・公定価格における制度的な対応について調査するとともに障害福祉分野との比較を行うことに加え、障害児者の食事を取り巻く課題等についての先行研究の整理と食事の提供の現状を整理し、今後の報酬体系の検討における基礎資料の作成に活用することを目的とした。
【対象と方法】
文献調査として、①障害児・者の、食事・栄養・健康に関する問題および必要な配慮の整理、②食事に関する制度の領域間比較、を行なった。加えて、食事提供体制加算・食事提供加算対象の事業所について、全体に占めるサービスの構成割合ごとに抽出した11,905か所(障害者対象サービス9,500か所、障害児対象サービス2,405か所)を対象に、アンケート調査を実施した。障害者対象サービス2,144か所(うち通所サービス1,832か所)、障害児対象サービス558か所より回答を得て、結果を分析した。
【結果と考察】
先行研究からは、障害児・者が健常者、定型発達児・者と比べて「栄養・健康リスク」が高いこと、「食行動・食生活習慣」「食事環境」に関するリスクがあることから様々な配慮が求められること、専門家による介入が障害者の健康の確保にあたり一定の効果が見込める可能性が示唆されていた。また、各領域の通所サービスにおける「食事の提供に要する費用」の負担は、障害児者福祉領域および高齢者福祉領域では、基本的に全額あるいは一部が利用者負担であるのに対し、児童福祉領域では、人件費は利用者の所得に限らず、食材料費は所得の低い世帯の3歳未満の子どもについて全額公費負担となっていた。アンケート調査の結果、食事提供を行っている事業所では、良好な体重の維持や「偏食」「早食い・丸呑み」といった課題に対処していたほか、食事提供を行っていない事業所よりも利用者の体重や身長の記録を行っていた。また、食事提供のある事業所の中でも、食事提供(体制)加算がある場合にはより細やかな配慮がなされていた。
発達障害者支援センターの地域支援機能、運営状況等に関する実態調査
【背景と目的】
平成17年4月に発達障害者支援法が施行されてから15年以上が経過した現在、センターには、地域の実情を踏まえながら当事者からのニーズに柔軟に対応していくことが求められている。実際に全国のセンターでどのような支援がなされているのか、地域のニーズにこたえるためにどのような多様な展開があるのか、また、それぞれにおいてどのような課題が生じているのかを把握することを通して、今後、その地域支援機能や運営体制の再検討、それに基づく要綱の見直し等を図っていく必要がある。そのため、本調査では、全国のセンターを対象としたアンケート調査を実施し、地域支援の実態や多様性の様相を明らかにする。その結果をもとに、社会的なニーズにより即したセンターのあり方を検討する資料とすることを目的とする。
【対象と方法】
発達障害者支援センター全国連絡協議会に加盟する83か所の発達障害者支援センターおよびそれに準ずる機関2か所を対象として、各管轄地域における発達障害児者への相談支援等の実施状況、関係機関等との連携状況、支援における課題等に関するアンケート調査を行い、79箇所から回答を得た(回収率92.9%)。なお、調査票の作成、分析にあたっては有識者や関係機関等から構成される検討委員会および作業部会からの助言を受けた。
【結果と考察】
事業の実施状況について
センターの地域的な多様性と課題について
本調査研究の課題
障害児の相談支援に関する実態把握の調査研究
【目的と方法】
障害児が障害福祉サービス等を利用する際には、相談支援事業所にて障害児支援利用計画やサービス等利用計画を作成することが必要となるが、実際には、事業所の利用が進まない、利用者が事業所を介さずに計画を作成する(セルフプラン)割合が高い、そのためサービスが適切に提供されていないケースがある、等の問題が生じているとされる。
しかしながら、全国的に詳細な実態を把握することはできていない状況のため、本調査研究では、行政(市区町村)および事業所を対象として障害児相談支援の実態を把握するための調査を実施し、有識者による検討を踏まえ、障害児相談支援における課題や効果的な相談支援のあり方について検討した。
市区町村向けのアンケート調査については、全国1,741 市区町村を対象とし、874 箇所から回答を得た(回収率50.2%)。事業所向けのアンケート調査については、各市区町村における指定障害児相談支援事業者・指定特定相談支援事業者・委託相談支援事業者のいずれかに該当する事業所を対象とし、1,609 箇所から回答を得た。
【結果と考察】
市区町村や事業所における障害児相談支援の実態について
市区町村や事業所における障害児相談支援の実態について、全体および人口規模別に検討したところ、おおよそ以下のような傾向が示唆された。
以上の傾向を踏まえ、相談支援体制の改善や相談支援事業所の負担軽減に向けた対応を行っていくことが望ましいと考えられる。
事業所での計画作成と関連する要因について
「事業所での計画作成」と関連する要因について検討を行ったところ、相談支援専門員一人あたりの計画作成が必要な児童数が多いこと等「事業所の抱えうる負担」が大きい市区町村では、「事業所での計画作成率」が低い、という傾向がみられた。
さらに、「事業所の抱えうる負担」に関連する要因について検討したところ、負担の増大に関連する要因としては、児童発達支援事業所や放課後等デイサービス事業所の数等、「障害福祉サービスの提供状況」という要因が示唆された。一方で、負担の軽減に関連する要因として、「市区町村における相談支援体制や事業所との連携」について検討したところ、サービス担当者会議に市区町村職員も出席すること等、「市区町村と事業所との連携」を示す変数についてはやや関連がみられたものの、全体としては明確な傾向はみられなかった。
ただし、本調査では個々の障害児やその家族を対象とする調査を行っていないため、今後は個別のケースについても情報を得られるような調査設計を行い、相談支援事業所における計画作成に関連する要因や計画作成による効果等について、より詳細に検討を行っていく必要がある。