本章では、作成した「介護予防Webアトラスの利用マニュアル」を収載した。
Adobe FlashをインストールしたWebブラウザのアドレスバーに、各コンテンツのURLを入力する。
例) http://www.doctoral.sakura.ne.jp/WebAtlas/Kihonchecklist/Japan/Single/atlas.html
ここで画面が開かず、以下のようなエラーが表示される場合には、上部の情報バーの部分「ここをクリックしてください」をクリックする。続いて表示されるメニューから「ブロックされているコンテンツを許可」を選択する。ここで初めて、ブラウザ上にコンテンツが読み込まれる。
背景画像を読み込むために、Adobe Flash Playerのグローバル設定を変更する。
ブラウザにマップコンテンツが表示された状態で、任意のポイントを右クリックすると、グローバル設定メニューが表示される。「グローバル設定」を選択する。
FlashPlayer設定マネージャーウィンドウが開く。「高度な設定」タブの「信頼されている場所設定」をクリックする。
「信頼されている場所設定」ウィンドウで、「追加」ボタンをクリックし、「サイトを追加」する。
Webサイトのドメインの入力タブに、「C:\」と入力し「確認」ボタンをクリックする。
設定ウィンドウをとじる。
本節では、InstantAtlas®によるWebアプリケーションの機能について概略する。
以下ではシングルマップテンプレートを例として、画面に含まれるメニューの各機能を説明する。
Web画面には、地図ウィンドウ(下図中の@)、レジェンドウィンドウ(D)、円グラフウィンドウ(E)、テーブルウィンドウ(F)、バーチャートウィンドウ(G、Gのボタンをクリックすると時系列チャートウィンドウと切り替えられる)、比較テーブルウィンドウ(H)、時系列アニメーションウインドウ(I)が含まれる(下図)。
地図ウィンドウの左上部にある「データ」ボタン(上図 @)をクリックすると、「地理エクスプローラー」という画面が開きメニューと変数リストが表示される。表示された変数名をクリックすると、さらに変数リスト、年次の順に項目が表示される。InstantAtlas®では、項目は「インジケータ」と呼ばれる。年次のインジケータをクリックすると、色分けされたマップが描画される(下図)。
地図ウィンドウのスケールバー(Web画面概要Aをクリックすることで、地図が拡大(縮小)できる。また、地図上でマウスポインタがてのひらアイコンの状態になった時に、地図の移動が行える。
グーグルマップがレジェンドウィンドウに表示されているマップでは、背景画像を地図、地形、航空写真、ハイブリットの4種類に切り替られる(Web画面概要B) 。
設定されているフィルター変数を使って、特定の条件を満たす保険者に絞り込んで表示ができる。下図は、フィルター変数としてエリアを用いて、中部地方にフィルターをかけている様子を示す(Web画面概要C)
レジェンドウィンドウでは、地図ウィンドウに表示されるレイヤー(層)の表示・非表示の切り替えを行う。「都道府県」「Googleマップ」などのレイヤーを表示させたくない場合、レイヤー名左のチェックボックスをオフにする(Web画面概要のD)。
レジェンドウィンドウ(Web画面概要のD)の左上にある鉛筆アイコン(下図左)をクリックすると、凡例の設定ウィンドウが表示される。パレット内の任意の色を選択すると、塗り分けマップのカラーを変更できる。「パレットを逆に」チェックボックスをオンにすると、値の高いほど濃い色、値が低いほど薄い色という初期設定を逆転させることができる(下図右)。
「透明性」バーでは、塗り分けマップの透過性の度合いを設定できる。背景画像の地名や地形情報の上に統計データを重ねて表現したい場合に、透過性の設定を行う。
クラスの数は、自由に変更が可能である。また、「クラス分類」のドロップダウンボックスをクリックすると、等間隔分類(Equal Interval)、等量分類(Quintile)、自然分類(Natural
Breaks)、連続値(Continuous)、標準偏差分類(Standard Deviation) の各手法が選択できる。
介護予防Webアトラスシステムでは、都道府県・厚生労働省地方支局内における各地区の順位を明瞭にするため、クラス分類の初期値を等量分類とした。それぞれの分類手法により、分布のパターンの見え方が異なるため、利用自身が目的に従った分類区分法を設定する必要がある。以下の各分類手法の特徴を参考にされたい。
A 等間隔分類:値の範囲を等間隔に区切り、カテゴリわけする区分法。閾値が直感的に分かりやすい一方、僅差の値が別のカテゴリに分類されることで性質の異なる地域として表現される点を留意しなければならない(下図)。
B 等量分類:値を並べ替え、その順位により各階級区分に入る保険者数を等しくする区分法。地域全体における順位(上位から20パーセンタイルなど)が明確に表現できる(下図)。
C自然分類:値の落差の大きな点を変異点として閾値にする区分法。学術的によく利用されているJenksの最適分類法を用いて区分している。閾値の区切りは等間隔分類に比べ直感的にわかりにくいが、カテゴリ(色)が同じ保険者の値は類似している一方、異なる色の保険者間は値に差がある(似ていない)ことを表現できる(下図)。
D連続値分類:他の手法のように値を、閾値を設定してカテゴリわけするのではなく、値の大きさに対応するように濃淡に差をつけて表現する方法。InstantAtlas®では、地図ウィンドウでマウスでポイントしたフィーチャー(保険者や地域)の値が、レジェンドウィンドウの表示によって相対的に把握できる(下図)。
E標準偏差分類:平均を基準として、平均からの乖離の程度を明瞭にしたい場合に利用する。複数の地図を比較する場合に便利だが、凡例に絶対値が表示されないため直感的にわかりにくいという欠点がある。色の設定は、平均以下、平均以上とで対照色にすることが望ましいが、現在の介護予防Webアトラスシステムではこのような色設定は出来ない(下図)。
円グラフ(Web画面概要 E)は、レジェンドウィンドウで階級区分された各カテゴリに含まれるフィーチャーの割合が示される。色は、地図ウィンドウの主題図の凡例の各階級に対応している。下記の右図は等間隔区分の円グラフである。等間隔区分では、階級内に含まれる地区数が1つもない場合もある。
テーブルウィンドウ(Web画面概要 F)では、表頭にあるフィールド名(「名前」、「インジケータ」)をクリックすると、値の並び替えを行える。またテーブルのレコードを選択すると、地図と連動したフィーチャー(地域)の選択が行える。テーブルウィンドウとマップウィンドウ、レジェンドウィンドウ、バーチャートウィンドウは連動しており、例えば、レジェンドウィンドウで最上位の階級(10.2-11.90)を選択すると、当該の階級はオレンジ色に反転し地図上にもオレンジ色で示される。テーブルウィンドウでも、最上位の階級に含まれる3つの地区がオレンジ色で示され、同様にバーチャートウィンドウでも、最上位の地区がオレンジ色となる。なお、選択状態はダブルクリックで解除できる。
また、テーブルウィンドウの各レコード(地区名)の左側の虫眼鏡アイコンをクリックすると、選択した地区が地図ウィンドウ上でズームされる(下図)。
バーチャートウィンドウ(Web画面概要G)は、各フィーチャーを値の順に並べ替え、横軸に地区、縦軸に値をとったチャートを示す(下図)。各地区のバーの色は、レジェンドの各階級と対応している。バーをマウスで選択すると、ポイントされた地区の地区名と値とがTipsウィンドウに表示される。これにより、任意の地区の相対的な順位と値をインタラクティブに検索可能である。
なお、後述する比較テーブルウィンドウ内のレコードを選択すると、バーチャートウィンドウ内にも比較テーブルウィンドウ内のレコードの値が横方向のバーとして表示される。
バーチャートウィンドウボタンをクリックすると、時系列チャートに切り替わる(下図)。
時系列チャートウィンドウでは、選択されたフィーチャーの時系列変化グラフを表示する。比較テーブルウィンドウのレコードとテーブルウィンドウのレコードを選択した状態では、比較テーブルウィンドウのレコードインジケータを赤色、テーブルウィンドウの選択フィーチャーをオレンジ色として、それぞれ系列として表示する。テーブルウィンドウのレコードを複数選択した場合にも同様に、選択されたフィーチャーが系列としてグラフに追加される。
地図化した変数のデータを、別の地域のデータと比較したい場合、比較テーブルウィンドウ(Web画面概要H)が便利である。比較テーブルウィンドウのレコードを選択すると、バーチャートウィンドウに比較対象の値が表示される。
時間アニメーションウィンドウ(Web画面概要I、下図)に表示されたバーでは、データベースに含まれる年次間に、各地区がどのように変化したのかを地図上のアニメーションで再現する。アニメーションを開始させるには、年次を表すバーの左側の>ボタンをクリックする。2009年から2010年への値の変化は、マップウィンドウ、円グラフウィンドウ、レジェンドウィンドウ、テーブルウィンドウ、バーチャートウィンドウの全てで連動して描画される。
ブラウザの画面の任意の場所で、右クリックによりコンテクストメニューが表示される。このうち、地図の印刷プレビュー、エクスポートメニューでは、ブラウザ画面、地図画面等の印刷が行える。
エクスポートメニューでは、JPG、PNGの形式が選択でき、エクスポートする画面もフルスクリーン、レジェンド(凡例)、比較テーブル、円グラフ、バーチャート、地図が選択できる。
ここでは、介護予防事業報告のデータを用い、全国シングルマップ・テンプレートを事例に説明する。ダブルマップ・テンプレートの例は、次項で説明する。
http://www.doctoral.sakura.ne.jp/WebAtlas/Kihonchecklist/Japan/Single/atlas.html
要介護認定率(要支援者)のマップが描画される。きれいな西高東低傾向が確認される。
初期値が等量分類になっているのを確認する。
色を変えることで凡例の区別が鮮明になった。
レジェンドウィンドウのカテゴリのうち、最上位の階級(5.80-7.51)の凡例色の部分にマウスカーソルを合わせると、マップウィンドウ上でも最上位の階級に相当する県が水色に反転表示される。同様に、凡例色の部分でマウスをクリックすると当該のカテゴリはオレンジ色に表示される(明確な選択)。選択状態の都道府県の要介護認定率(要支援者)の1年間の変化が時系列チャートで表示される。他の階級についても同様にマウスを利用して時系列チャートを確認する。どの階級の都道府県も1年間の認定率の傾向に差は見られないため、2010年の地図に現れた傾向が固定化している様子が読み取れる。
西高東低傾向は変わらないが、階級わけされた各カテゴリ内の都道府県の数が等量分類のように同じではないため、少し異なる印象を与える。概して、関東甲信越地方で認定率は低く、首都県から離れるに従い認定率が高くなる傾向が読み取れる。しかも、東北地方、中国地方、四国地方など地方ごとに認定率は類似していることがわかる。
塗り分けマップでは、見た目上面積の大きな地域の色割合が高まるため、色の面積比率が高い階級が強調されてしまう。そこで円グラフを使って、各階級の地図上で見た色の分布ではなく、当該階級が全体に占める割合を確認する。円グラフウィンドウで、最も認定率が低い階級の色をクリックすると、この階級には全体の29.7%の都道府県が含まれていることがわかる。
H21年とH22年の1年間で、要介護認定率の分布傾向がどのように変化したのかを確認する。年次ごとのデータに合わせて凡例の階級閾値が異なるため、塗り分けマップを等量分類で描画すると、経年変化による差異を評価しやすい。また、地図と連動して値が変化する時系列チャートウィンドウにより、2009年に比べて2010年の認定率が全国的に上昇していることがよく分かる。
ブラウザ画面の任意の場所でマウスの右クリックメニューを使い、「テキストを追加します」を選択する。テキストエディタにコメントを記述し、追加ボタンをクリックするとブラウザにコメントが追加される。
ブラウザ上の任意の点でマウスを右クリックし、表示されるメニューより「印刷プレビュー」を選択する。プリンタの設定のページ設定を横置きにしてから印刷するのがよい。
ブラウザの右クリックメニューからエクスポートを選択し、フルスクリーン画面を画像に保存する。
以下では、介護予防事業報告の全国ダブルマップ・テンプレートを事例に利用の仕方を説明する。
http://www.doctoral. sakura.ne.jp/WebAtlas/Kihonchecklist/Japan/Double/atlas.html
ダブルマップでは、2枚のマップウィンドウのほか、テーブルウィンドウ、散布図ウィンドウが表示される。散布図は、2つの変量の分布傾向に系統的な関係性が見られるかを評価するために利用される(下図)。
凡例の鉛筆アイコンをクリックし、主題図の分類手法が、Quantile(等量分類)に設定されていることを確認する(本介護予防Webアトラスシステムの初期設定としている分類手法)。2時点のデータの分布が異なるため、2つの地図の凡例の閾値は異なっている(例えば、2009年の地図では、最上位のクラスは、70.47〜82.53%の値が含まれているのに対し、2010年の地図では、68.30〜82.59%の値が含まれている)。従ってこれらの地図では、地図の色を比較することから絶対値の変化は判断できないことがわかる。
しかし等量分類の各階級の色は、全体における順位を明瞭にしている。ここから、2009年と2010年における各都道府県の基本チェックリスト実施率の順位を読み取り、そのパターンが似ていることを読み取ればよい。すなわち、基本チェックリスト実施率は、2年間で同じ分布傾向を示していることがわかる。
ダブルマップテンプレートの上の図(マップ@)の変数は、散布図における横軸の変数に、また下の図の変数は散布図の縦軸の変数に対応する。通常の散布図を作成する場合、縦軸に従属変数を、横軸に説明変数を指定してグラフを作成する。散布図からは、サンプルのデータの値に系統的な傾向があるかどうかを読み取れる。
今、基本チェックリスト実施率(2009年)がマップ@に、基本チェックリスト実施率(2010年)がマップAにそれぞれ設定されている。そのため、散布図ウィンドウの縦軸に2010年のデータが、横軸に2009年のデータが表示されていることを確認する。
両年次とも、各都道府県の基本チェックリストの実施率は、極めて似ていることが分かる。
新規要介護認定率(要介護)、要介護認定率(要介護)の両分布とも、日本海側と九州、四国とで順位が高いというパターンが確認される。散布図をみると、要介護認定率は2.5%〜3%の値に分布が偏っているが、新規要介護認定率(横軸)が高いほど、要介護認定率(縦軸)も値が大きくなっているという大まかな傾向が読み取れる。このことから、元々要介護認定率が高い都道府県では新規に認定される認定者も相対的に多いことが推察される。
散布図には、データから推定された回帰式が直線として描画されている。縦軸方向をみて、直線から値が乖離しているサンプルにマウスポインタを合わせると、Tipsウィンドウに該当する都道府県名と値とが表示される。ここでは、乖離したポイントにマウスポインタを合わると秋田県が表示された。散布図内のデータをクリックすると、マップウィンドウ(マップ@、マップA)、およびテーブルウィンドウでも、連動して秋田県のデータが選択された。
回帰直線上から値が乖離したデータは、予測されたモデルで説明できない(他に何らかの局所的な要因がある)ことを意味している。こうした地域を特定することで、地域特有の要因を明らかにするための調査がどの地域で必要なのかを判断することができる。
散布図ウィンドウには、散布図と共に相関係数(r)と回帰式のモデルが表示される。相関係数(r)は0から±1の値をとる指標で、0に近いほど2つの変数の分布が似ていなく、1(−1)に近いほど分布パターンが類似していることを表す。要介護認定率(要支援者)と新規要介護認定率(要支援者)の相関係数は、0.53であることから、両者にはやや相関があるということがわかった。