平成23年度厚労省保健健康候増進等事業 事業概要

WEB-GISを活用した客観的指標によるベンチマーク・システムの構築」

 

事業実施担当者 日本福祉大学 健康社会研究センター

 

 

1. 事業の背景

介護保険制度の適正な運営には、現状の把握と関係者への周知が重要である。介護保険者である市町村は、介護予防事業対象者を把握するための基本チェックリストをはじめとするデータを所有している。しかし、それらが現状の把握に十分に活用されておらず、近隣や全国の類似保険者との相互比較(ベンチマーク)による課題の把握や政策・サービスの効果・効率の評価はほとんどなされていないとの指摘がある。

一方、厚生労働省老健局老人保健課によって、介護予防事業報告が、同省のウェブサイトにおいて公表されている。また各保険者の特性を分析する上で有用な社会統計調査データもあるものの、それらが一元的なデータベースになっていないため、それらが各保険者で活用され、その潜在力が十分に引き出されているとは言いがたい。

 海外では、地理情報システム(GIS)の技術を用いてデータを地図上に表現し、ウェブ上で閲覧できるWeb-GISシステムが構築されてきている。日本でも、既在データを一元的なデータベースとし、Web-GISシステムを活用して、保険者の担当者や市民にとって利用しやすい形で公表すれば、現状や課題、事業の進捗状況の把握が進み、効果の検証や市民への周知などにも有用と思われる。さらに、今後モニタリングしていくことで、各保険者の介護保険事業がより有効かつ効率的なものになると期待される。

そこで、介護保険制度の適正な運営・周知に寄与する調査研究の一つとして、以下の目的を掲げ本事業に取り組んだ。

 

2. 目的

本研究は、既存のデータをWeb-GISの技術を活用して視覚的にわかりやすい形で表示するベンチマーク・システムを構築することで、根拠に基づくマネジメントによる保険者機能の強化をすすめ、介護保険制度の適正な運営の支援を目指すものである。

数値化されたベンチマーク指標群を利用することによって、異なる自治体間で、現状・パフォーマンスなどの比較が可能になり、これによって政策介入ニーズの高い重点課題の把握、自治体間比較による阻害・促進要因の解明、先進保険者の取り組みの他保健者への導入などを進められる基盤整備を目的とした。

 

3. 本事業の概要

 本事業では、1)海外で利用が進んでいるWeb-GISシステムであるGeoWise社のInstantAtlas®を我が国に始めて導入すること、2)老健局が公表している介護予防事業報告(http://www.mhlw.go.jp/topics/2012/02/tp0222-1.html)、および3)公表されている各種の社会統計調査データを収載した社会人口統計体系(財)統計情報研究開発センター)から、保険者の運営に資すると思われるデータを選択すること、4)それらのデータをWebブラウザ上で表示できるWebアトラスシステムを開発すること、5)InstantAtlasによる介護予防Webアトラスシステムの利用マニュアル(日本語版)を作成すること、に取り組んだ。

 

4. 報告書の構成

本事業報告の構成は以下の通りである。まずU章で、本研究で構築した介護予防Webアトラスシステムについて、その概要や利用することの利点を紹介する。V章で、InstantAtlas®によるWeb-GISアプリケーションの開発手順と使用した変数の一覧を示した(全項目については、巻末資料参照)。W章では、本事業の成果物である「介護予防Webアトラスシステム」のURLを掲載した。X章には、作成した介護予防Webアトラスシステムの利用マニュアル(日本語版)を収載した。Y章では、GIS利用者の声や本システム利用上の留意点をまとめた。最後にZ章で、本事業のまとめと今後の課題を述べる。

 

 

 

 

5. まとめと今後の課題

本研究で構築した介護予防のためのWebアトラスシステムは、既存の介護予防事業報告などを利用しWebブラウザ上で閲覧可能なマップコンテンツとして発信する、我々の知る限り日本で初めてのサイトである。

本システムは、全国の介護保険者の介護予防に関わる現状を、多角的な指標群を用いて地図上で「見える化」した。システムは保険者に、予防対象者の潜在的なニーズの分布や予防活動の効果を地理的に探索し、評価することを可能にする。また、テンプレートに含まれる簡易な統計の利用により、介護予防事業の新規ニーズ対象者や要介護者の比率などの実態を評価しやすくした。

本システムと同様なGIS表示された結果を利用した保険者の担当者から好評価を受けていることから、我が国においても、地図をベースとした本システムは、地域的な対策によるまちづくりとともに進める介護予防政策の立案やそのモニタリングと評価、パイロットスタディの対象地区の選定などにおいて貢献できる可能性は高い。

今後の課題として、1)保険者の介護予防担当者にとってより有益な情報となるように、利用者の意見を広く聴取し要望の多い統計を追加する、2)今回データベースに収録できなかった過去の年次の統計データを整備し、経年変化を追跡できるようにする、3)保険者が、生活圏域に合わせたより小地域における傾向を把握可能なシステムにするため、小学校区単位でのデータ収集とマップコンテンツの制作、4)本システムを活用して社会背景は類似していながら要介護リスクの割合に大きな違いが見られる地域間の比較検討により、介護予防活動の手がかりを引き出すこと、5)特徴ある取り組みをしている保険者における経時変化などを分析することなどが、あげられる。